「また同業者が一社、廃業した」——そんな話を耳にする機会が、最近増えていないでしょうか。
取引先の協力会社から、あるいは地域の工務店仲間から、そうした知らせが届くたびに、他人事とは思えない気持ちになる経営者様も多いかもしれません。
2026年上半期、建設業の倒産件数は13年ぶりに1,000件を超えました。
資材価格の高騰、人手不足、金利の上昇。厳しい経営環境が続く中、同じ条件下にありながら、着実に事業を継続している工務店も存在します。その差は、一体どこにあるのでしょうか。
今回は、このデータが示す業界の現状を整理しながら、こうした環境の中でも変化に対応できる工務店に共通する考え方を解説していきます。
建設業倒産が、13年ぶりの水準に
2026年1月から6月までの建設業倒産件数は1,043件となり、上半期としては13年ぶりに1,000件を超えました。前年同期比で5.8%の増加です。(出典:新建ハウジング2026年8月13日号)
これは、全産業の上半期倒産件数5,335件(前年同期比6.6%増)の中でも、建設業が大きな割合を占めていることを示しています。業種別に見ると、職別工事業(大工・内装などの専門工事)で前年同期比12.7%増、総合工事業で11.9%増と、どちらも同じように増加しています。元請けだけでなく、現場を支える専門工事業者にも、等しく厳しい状況が及んでいることがわかります。
なぜ、この時期に倒産が増えているのか
倒産件数の増加には、複数の要因が重なっていると考えられます。
資材価格の高騰、人手不足による人件費の上昇、そして金利の上昇傾向です。これらはいずれも、工務店の利益を圧迫する要因として、ここ数年続いてきました。コストが上がり続ける一方で、販売価格への転嫁が追いつかなければ、利益率は徐々に削られていきます。
また、新設住宅着工戸数は増加傾向にあるものの(2026年6月は前年同月比18.6%増)、これは全体の数字であり、個々の工務店の受注が均等に増えているわけではありません。むしろ、価格競争が厳しくなる中で、体力のある会社とそうでない会社の差が、これまで以上にはっきりと表れやすくなっているとも考えられます。
一社の倒産が、周辺にも影響を広げる
建建設業は、一社だけで完結する仕事がほとんどありません。元請けの工務店の下には、大工・内装・設備・塗装といった複数の協力会社が連なり、それぞれが工程の一部を担っています。
この構造の中で、どこか一社が倒産すると、影響はその会社だけにとどまりません。発注していた工務店は、工事の途中であれば代わりの業者を急いで探す必要に迫られますし、逆に下請けの協力会社が倒産すれば、発注元である工務店の工程にも遅れが生じます。
元請け・下請けを問わず倒産が増えているという今回のデータは、こうした連鎖のリスクが、業界のあちこちで起きていることを示唆しているとも言えます。一社の経営判断が、取引先や協力会社の経営にまで波及する。これが、建設業という業界構造の特徴でもあります。
新築一本足経営のリスク
倒産件数の増加は、新築工事だけで経営を成り立たせていることの危うさを、改めて浮き彫りにしています。
新築工事は、着工から引き渡しまでの期間が長く、その間に資材価格が変動しても、契約金額を柔軟に変更することは簡単ではありません。原価が上昇した分は、基本的に自社の利益を削って吸収せざるを得ません。受注が一つの事業(新築)に集中していればいるほど、こうした外部環境の変化の影響を直接受けやすくなります。
今、リフォームや不動産仲介など、新築以外の事業にも手を広げる「事業の多角化」という言葉は、業界内でもすでに広く知られるようになりました。実際、こうした動きにいち早く着手し、収益の柱を複数持つ体制へと舵を切っている会社も出てきています。知っているかどうかではなく、すでに動き出しているかどうかで、これから先の差はさらに開いていくと考えられます。
変化に対応できる工務店に共通する考え方
倒産件数が増えている状況の中でも、事業を安定的に継続している工務店には、いくつかの共通点があると考えられます。
① 新築工事だけに依存しない収益構造を持っている
リフォーム、リノベーション、不動産仲介など、工事以外のタイミングで収益が発生する事業を持つことで、新築受注の波に経営全体が左右されにくくなります。
たとえば、新築の受注が一時的に落ち込んだとしても、リフォームや仲介の収益が下支えになれば、資金繰りが一気に悪化する事態を避けやすくなります。複数の収益源を持つことは、単なる売上の積み増しではなく、経営の安定性そのものを底上げする意味を持っています。
② 顧客との関係を一度きりで終わらせていない
新築の引き渡しで関係を終わらせず、点検やメンテナンス、将来の住み替え相談まで、長期的に顧客と関わり続ける仕組みを持っています。一人の顧客から得られる生涯の取引機会を増やすことは、新規顧客の獲得にかかるコストを抑えることにもつながり、経営の効率そのものを改善します。
③ 変化の兆しに早く気づき、対応している
資材価格や着工数といった業界全体の動きを把握し、次の一手を早めに検討する姿勢を持っています。価格転嫁のタイミングを逃さない、資金繰りが厳しくなる前に対策を打つといった、日頃からのアンテナの高さが、土壇場での判断の差につながります。
これらに共通しているのは、「新築を建てて終わり」という単発の取引ではなく、顧客との関係を長期的な視点で捉えているという点です。
不動産の窓口を持つことも、一つの選択肢
収益の柱を複数持つという考え方の中で、工務店が不動産仲介の窓口を持つことも、有効な選択肢の一つです。
不動産仲介は、工事とは異なるタイミングで利益率100%の収益が発生するため、新築受注の波に左右されにくい収益源になります。また、土地探しの段階から顧客と接点を持てることで、お客様がどんな選択をされても、自社の建築受注だけでなく、何かしらの利益につながる可能性が生まれます。
資材価格や金利の変動に経営が振り回されやすい今だからこそ、こうした「もう一つの収益の柱」を持つ意味は大きいと言えそうです。
まとめ
建設業の倒産件数が13年ぶりに1,000件を超えたという事実は、業界全体が厳しい局面にあることを示しています。一社の倒産が取引先や協力会社にまで影響を及ぼしかねない業界構造の中で、この状況下でも事業を継続している工務店には、新築工事だけに依存しない収益構造や、顧客との長期的な関係づくりという共通点が見られます。
変化の激しい時代だからこそ、収益の柱を複数持つという発想が、これからの工務店経営において重要になってくるのではないでしょうか。
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