「新築は減っていくが、リフォームはまだ伸びる」。こうした話を、業界の中で耳にする機会が増えています。実際、2026年のリフォーム市場は7兆7,000億円前後と、2025年を上回る見通しです。
ただし、市場全体が伸びていても、すべての工務店に追い風が吹いているわけではありません。中身を見ると、伸びている分野と減っている分野がはっきり分かれています。
今回は、リフォーム市場のデータを分野別に読み解きながら、工務店が次に目を向けたいポイントを解説していきます。
リフォーム市場は、2026年に7.7兆円の見通し
2025年の住宅リフォーム市場規模は7兆5,119億円(前年比2.5%増、推計)でした。2026年は7兆7,000億円前後、前年比1.9%増の予測です。(出典:矢野経済研究所「住宅リフォーム市場に関する調査(2026年)」)
なお、7.7兆円は2026年の予測値であり、確定した数字ではありません。資材の調達が大きく滞らなければ、上がった原価が価格に反映されて、市場は広がる見通しです。反対に、資材や設備の供給が途絶えるような事態になれば、予測を大きく下回る可能性もあります。
この調査でいうリフォーム市場とは、住まいの居住者が自分で費用を負担する工事のことです。増改築と設備の修繕・維持に加えて、家具・インテリアの費用も含みます。賃貸住宅やオフィス、マンションの大規模修繕は対象外です。つまり、個人のお客様が自分の住まいにどれだけお金をかけているかを表した数字だと言えます。
内訳を見ると、伸びているのは設備修繕
市場全体は増えていますが、分野別の動きは同じではありません。2025年の前年比は、次のとおりです。(出典:同調査)
- 増改築に関わる費用:22.1%減
- 設備修繕・維持関連費用:4.7%増
- 家具・インテリア費用:2.5%増
間取りを変えるような増改築は大きく減り、設備の交換や修繕といった工事が伸びています。市場規模という1つの数字だけを見ると、「リフォームは好調」と読み取れます。しかし実際には、大きな工事から、設備の修繕や維持を中心とした工事へ、中心が移っていると言えそうです。
自社の受注構成が増改築に偏っている工務店にとっては、市場全体の数字ほど実感が伴わない可能性があります。反対に、設備の交換や修繕を地道に受けてきた工務店は、市場の流れに沿った動きができているとも言えます。
市場が伸びる理由は、件数より単価
では、なぜ市場規模は増えているのでしょうか。背景は大きく2つあります。
1つ目は、需要が底堅いことです。団塊ジュニア世代が持つ家が、手を入れる時期を迎えつつあります。住まいは、建ててから年月が経つほど、どこかに手を入れる必要が出てきます。そうした需要は、景気の波に左右されにくく、一定の水準で生まれ続けます。
2つ目は、1件あたりの工事単価が上がっていることです。資材費と人件費の上昇に加え、国の補助事業を使うことで、工事の中身がより充実したものになりやすくなりました。
つまり、市場が伸びている要因の一部は、工事の件数が増えたことではなく、単価が上がったことにあります。件数が大きく増えているわけではない以上、「市場が伸びているから、待っていれば仕事が増える」とは言い切れません。
納期遅延が、小規模な事業者ほど重くのしかかる
もう1つ見ておきたいのが、中東情勢の影響です。資材や住宅設備機器の受注が止まったり、納期が延びたりする状況が続き、工事の遅れや売上計上の遅れにつながっています。
お客様の動きは二つに分かれています。工事を先延ばしにする人もいれば、値上がりや供給停止を心配して早めに発注する人もいます。その結果、市場全体の需要は、大きくは落ち込んでいません。
差が出ているのは、事業者の側です。大手は調達力があるため、需要を取り込みやすい立場にあります。一方、小規模な事業者は、工期の遅れによって資金繰りが苦しくなりがちです。矢野経済研究所は、こうした体力の差が広がり、会社の統合や撤退を含む業界再編が進むと見ています。
工事が遅れれば、売上の計上も遅れます。その間も、人件費や仕入れの支払いは待ってくれません。工事の受注が増えても、資金の面で苦しくなるのは、小規模な工務店ほど起きやすい構図です。
まず、自社の相談の中身を見直してみる
ここまでのデータは、あくまで市場全体の動きです。自社に当てはめるときは、まず自分たちの現場で何が起きているかを確かめておきたいところです。次の3つの問いが、その手がかりになります。
- 直近1年のリフォーム相談は、増改築と設備の修繕のどちらが多かったか:
市場と同じ動きなのか、違う動きなのかが分かります。
- 工事の相談の前後で、売却や住み替えの話は出ていなかったか:
お客様が、工事以外の選択肢も考えていたかどうかが見えてきます。
- 納期の遅れで、売上の計上や資金繰りに影響が出た案件はなかったか:
自社が受けている負担の大きさを、数字で捉えられます。
特に2つ目は、日々の打ち合わせの中で聞き流してしまいがちな点です。振り返ってみると、相談の入口に課題があることに気づく場合もあります。
工事の受注だけでなく、住まいの相談の入口を持つ
ここまでのデータから見えてくるのは、リフォーム工事の受注だけに頼る経営の難しさです。市場は伸びていても、増改築は減っています。単価が上がっても、納期や資金繰りの負担は重くなっています。
そこで考えたいのが、工事の前の段階で、お客様の相談を受ける入口を持つことです。
設備の修繕から、住まいの相談へつながる流れ
設備の修繕を考えるお客様の中には、築年数の経った住まいに、これからも住み続けるかどうかを意識し始める方も多いのではないでしょうか。設備を取り替えるタイミングは、住まい全体を見直すきっかけにもなります。
「このまま直して住み続けるのか」「いっそ売却して住み替えるのか」。リフォームの相談は、実はこうした住まいの選択と地続きです。ところが、窓口がリフォームの相談だけに限られていると、住み替えを考え始めたお客様が、相談先を不動産会社に変えてしまうこともあります。そこで工務店とのつながりが切れてしまうのは、もったいないことです。
不動産の窓口があれば、どの選択も自社の利益になる
不動産の窓口があれば、リフォームの相談に来たお客様に、売却や住み替えという選択肢も含めて提案できます。お客様がどの選択をしても、自社の何らかの利益につなげることができます。選択ごとに受けられる仕事を整理すると、次のとおりです。
- 住み続ける場合:設備の修繕や、住まい全体のリフォームを担当できます
- 売却する場合:売却の仲介を担当できます
- 住み替える場合:購入の仲介に加えて、次の住まいの建築やリノベーションの相談も受けられます
どの選択をされたとしても、お客様との関係が途切れません。これが、窓口を工事の相談だけに限らず、住まいの相談全体に広げる意味です。
不動産仲介は、建築工事とは別のタイミングで手数料収入が入る事業です。工事の遅延で売上の計上が遅れるときでも、収益の柱が1本増えることは、資金繰りの面でも心強い存在になります。
まとめ
リフォーム市場は、2026年に7兆7,000億円前後へ増える見通しです。しかし中身を見ると、増改築は減り、設備修繕が伸びています。市場が伸びる要因も、件数ではなく単価の上昇が大きく、納期遅延の影響は小規模な事業者ほど重くなりがちです。
市場全体の数字だけを見て安心するのではなく、自社がどの分野で、どのお客様から相談を受けているのかを見直してみることが、これからの経営の土台になります。その上で、工事の前の相談を受ける入口として、不動産の窓口を持つことも1つの選択肢です。
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