「良い家」を建てているのに、なぜ売却時に評価されないのか
高断熱・高気密など、性能にこだわった家づくりをしているにもかかわらず、いざ売却の場面になると、その性能があまり価格に反映されない―
そうした声を耳にすることがあります。
2026年3月、住宅金融支援機構が「特定残価設定型住宅ローン保険」の取り扱いを開始しました。
将来の売却価格をあらかじめ見積もったうえでローンを組む仕組みで、住宅ローンの分野でも「この家は将来いくらで売れるか」という視点が意識され始めていることがうかがえます。
(出典:住宅金融支援機構が2026年3月に公表した制度概要)
今回は、この動きをきっかけに、住まい手が「将来の資産価値」を知りたいと思った時、なぜ建築と不動産を同じ会社がワンストップで担う意味があるのか、という点を解説していきます。
「建てた人」と「価値を伝える人」が分かれている、という問題
家を建てる工務店と、その家を将来査定する不動産会社は、通常まったく別の会社です。
そのため、建てた側が持っている情報(使用した建材、施工の工夫、メンテナンス履歴など)が、査定の場に十分に伝わらないまま評価が行われることが少なくありません。
たとえば、住まい手が将来「売却したい」「価格を知りたい」と考えて不動産会社に相談した場合、まず求められるのは物件情報の説明です。
しかし住まい手自身は、建てた当時にどのような仕様やこだわりがあったのか、細部まで正確に覚えているとは限りません。
結果として、実際の家の価値がうまく伝わらないまま、一般的な相場や築年数だけを基準に査定が進んでしまうことも考えられます。
住まい手からすると、性能や仕様のこだわりを説明してくれたのは工務店なのに、いざ「将来いくらで売れるか」を聞きたい時には、まったく事情を知らない不動産会社に一から説明し直す必要がある、という状態です。これでは、工務店がどれだけ丁寧に家づくりをしていても、その価値が将来にわたって正しく伝わりにくくなってしまいます。
ワンストップであることの意味は「情報が途切れない」こと
ここで工務店自身が不動産の知識を持ち、相談を受けられる立場になっておくと、状況が変わります。具体的には、次のような違いが生まれると考えられます。
- 家を建てた時の情報をそのまま活かせる
仕様やこだわり、これまでのメンテナンス履歴などを、査定や住まい手への説明の場でそのまま活用できます。他社に一から説明し直す手間がかからないため、住まい手にとっても話が早く、安心材料になりやすいという面があります。
- 将来を考え始めたタイミングで、まず相談される相手になれる
住まい手が「そろそろ将来のことを考えたい」と思った時、日頃から家のことを一番よく知っている相手が窓口になっているというのは、心理的なハードルの低さにつながります。
- 相談内容によって窓口を変える必要がない
「売却」でも「建て替え」でも「賃貸に出したい」でも、間口を狭めずに対応できます。相談の入り口が一つで済むことは、住まい手が迷わず声をかけられる安心感にもつながります。
これは「性能を数値で証明する」ということではなく、建てた時の情報と、将来価値を伝える場面の情報が、途切れずにつながるという点に意味があります。
住まい手との関係は、一度きりではない
家を建てるという出来事は、住まい手にとって人生で何度もあるものではありません。
しかし、その家との関わり自体は、引き渡しをもって終わるわけではないという見方もできます。
住み始めてからも、家族構成の変化に合わせたリフォームの検討、将来的な住み替えの相談、あるいは相続に伴う売却の判断など、住まい手が家について考え、何らかの決断をする場面は、長い年月の中で複数回訪れる可能性があります。
こうした一つひとつの場面で、工務店が「相談できる相手」であり続けられるかどうかは、日頃からの関係性の積み重ねによるところが大きいと考えられます。引き渡しの時点だけで関係が終わってしまうと、次に住まい手が何かを検討し始めた時、声がかかる相手はまた別の会社になってしまうかもしれません。
反対に、建てた後も相談できる窓口であり続けることができれば、住まい手にとっても「困った時にまず相談する相手」として記憶に残りやすくなります。
これは短期的な営業活動というより、長期的な関係づくりに近い取り組みだと言えそうです。
大事なのは「最初の相談先に選ばれる」こと
これは「将来必ずその工務店に建て替えを頼む」という保証ではありません。
住まい手が最終的にどう判断するかは、あくまで住まい手次第です。
ただ、家のことで悩んだ時に最初に思い浮かぶ相手になれるかどうかは、その後の選択肢に大きく影響します。
売却の相談から、建て替えやリフォームの話に発展することもあれば、単に売却の仲介だけで完結することもあります。いずれにしても、顧客が動き出す最初のタイミングで接点を持てているかどうかが、工務店にとっての機会の差になり得ます。
まとめ
住宅ローンの分野でも「将来の資産価値」を前提にした商品が登場するなど、住まいを「建てた時点」だけでなく「将来売却・活用する時点」まで含めて考える流れが広がりつつあります。
この時、建てた工務店自身が不動産の知識を持ち、相談を受けられる立場にあることは、情報が途切れずに伝わるという点で意味があります。
ただし、それは将来の受注を約束するものではなく、あくまで「顧客が最初に相談する相手になれる」機会を広げるものだと捉えるのが実態に近いのではないでしょうか。
こうした将来の資産価値やワンストップ対応という視点は、不動産の知識と深く関わってきます。
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